Column
2024年4月23日
目次
▼カフェを自分で開業するまでの流れ
―1.カフェのコンセプトを決める
―2.資金を準備する
―3.事業計画書を作成する
―4.土地や物件を選ぶ
―5.店舗の工事、設備・備品の購入
―6.行政への手続き
―7.メニューの開発
▼カフェ開業に必要な資格
▼カフェ開業に必要な手続き
▼カフェ開業にかかる費用
▼カフェ開業の際に利用できる補助金・助成金
▼カフェ開業の準備リスト
▼カフェの開業費用を抑える方法
▼カフェ開業で失敗しないためのポイント
▼まとめ
「お気に入りのインテリアや食器を揃えて、居心地のよいカフェをつくりたい」─そんな想いから個人でカフェの経営に憧れを持つ人は少なくありません。実際にカフェを開業するにはどんな準備が必要になるのでしょうか。
カフェ開業の流れを押さえたうえで、必要な資格や手続き、カフェ開業に必要な費用や必要なものなどを紹介していきます。
カフェを自分で開業するまでの主な流れは以下の通りです。
カフェと一言でいっても、店舗の規模や販売方法、雰囲気などは様々です。至るところに様々なカフェがあり、大手チェーンもあるため、差別化を図るためにはコンセプトを明確にしておくことが大切です。また、コンセプトは店舗の立地やデザイン、ターゲット、メニュー、サービスなどを決めるうえでの軸となります。
カフェのコンセプトは簡単にいうと、「どのようなカフェを開きたいか」ということ。「5W2H」といわれる「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」「How much(いくらで)」の7つの点から考えると、効率よく具体的にコンセプトを立案できます。
カフェの開業には、店舗や設備、什器などにかかる初期費用のほか、経営が軌道にのるための運転資金が必要です。カフェの経営には賃料や光熱費、材料費、人件費といったランニングコストがかかります。カフェの開業資金として、「初期費用+半年分の運転資金」を用意しておくのが目安です。
カフェの開業資金は貯金などの自己資金で賄うほか、日本政策金融公庫などから融資を受ける、後述する補助金や助成金を利用するといった方法があります。
カフェ開業のための資金の準備と並行して、事業計画書を作成します。事業計画書は事業内容、事業計画、事業戦略、収益の見込みなどの説明書類です。
事業計画書の作成を通じて、カフェ経営でどのように収益を上げていくか、ビジネスプランを明確にできます。また、融資をなどの資金調達の際には、事業計画書が必要となります。
カフェを開業するには店舗が必要ですが、「自宅を改装する」「テナントを借りる」「中古の店舗を購入する」「土地を購入して店舗を新築する」といった方法があります。自宅をカフェとするケース以外は、借りる物件や購入する物件の選定が必要です。テナントを借りる場合は、居抜きで借りられる物件を探すと、初期費用を抑えられるのが一般的です。
カフェを開業するための土地や物件を探す際には、立地を重視することが大切です。立地は集客に大きく影響する要素であり、ターゲット層となる顧客を獲得できるかという点にも大きく関わります。
店舗の物件が決まったら、コンセプトに沿って設計を依頼し、店舗の形態にもよりますが、建設工事、あるいは内装工事や外装工事を行います。設計は設計事務所やデザイン事務所に依頼し、工事は建設会社に依頼する方法と、設計と工事を建設会社に依頼する方法があります。
カフェを開業するには、看板や厨房機器、食器棚、音響機器、テーブルや椅子などの購入や設置が必要です。このほかにも、食器やグラス、ゴミ箱、清掃用具など、備品を含めると、用意するべきものは多岐にわたります。
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カフェを自分で開業する際には、管轄する行政への各種手続きが必要です。保健所で飲食店営業許可を取得しなければカフェの営業ができません。パンや菓子をテイクアウト用として販売する場合には、菓子製造業許可が必要なケースがあります。消防署では防火対象物使用開始届出などの手続きが必要です。
また、個人事業として営む場合は、税務署に開業届の提出を行います。従業員を雇う場合には、労災保険や雇用保険などへの加入手続きを行うほか、社会保険の加入手続きが必要となるケースもあります。
コンセプトをもとに、集客につながるようなメニューを開発します。何度も来店したくなるような定番メニューと、トレンドや季節感を意識した期間限定メニューを組み合わせるのがポイントです。定番メニューは新規のお客様に安心感を与えるとともに、リピーターを獲得するのが目的です。期間限定メニューはマンネリ化を防いだり、リピーターに期待感を持たせたりする役割があります。
ただし、メニューが多すぎると、目移りして選びにくくなることや食品ロスが生じやすい点に注意が必要です。
カフェを開業する際には食品衛生責任者の選任が必要です。また、従業員を含めて収容人員30名以上のカフェを経営する場合には、防火管理者の選任も必要となります。
食品衛生管理者の選任には資格要件があり、栄養士や調理師、製菓衛生師、医師や薬剤師などの有資格者を除くと、各都道府県の食品衛生協会が開催する食品衛生責任者養成講習会の受講が必要です。
また、防火管理者は、延床面積300平米以上は甲種防火管理者、300平米未満は甲種防火管理者、または乙種防火管理者の資格が必要となっています。防火管理者の資格を取得するには、種別に応じた防火管理講習の受講が必要ですが、資格や実務経験によって受講が不要となる人もいます。
カフェ開業に必要な主な手続きには以下のものがあります。
手続き一覧 | 手続き先 | 概要 |
飲食店営業許可 | 保健所 | 管轄の保健所で事前相談を行った後、営業許可申請書を提出。食品衛生責任者の選任が必要。書類審査と施設確認が行われる。 |
菓子製造業許可
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保健所 | パンや菓子をテイクアウトする場合が対象。管轄の保健所で事前相談を行った後、営業許可申請書を提出。食品衛生責任者の選任が必要。書類審査と施設確認が行われる。 |
防火対象設備使用開始届 | 消防署 | 使用する7日前までに防火対象物使用開始届出書を提出。 |
防火対象物工事等計画届出書
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消防署 | 建築基準法による確認申請などが必要ではない防火対象物の建築、修繕、模様替え、用途変更の工事を行う場合が対象。工事着工の7日前までに防火対象物工事等計画届出書や防火対象物の概要表、各種図面などを提出。届出が必要か、事前相談で確認しておく。 |
火を使用する設備等の設置届
|
消防署 | 一定のコンロやボイラー、炉などを設置する場合が対象。設備の設置前に、火を使用する設備等の設置届出書を提出。 |
防火管理者選任届
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消防署 | 従業員を含め、収容人員30名以上の場合が対象。営業開始前に、防火管理者選任届書を提出。 |
個人事業の開業届
|
税務署 | 個人事業として経営する場合は、事業の開始から1ヶ月以内に、個人事業の開業・廃業等届出書を提出。 |
労災保険の加入
|
労働基準監督署 | 従業員を雇用した日の翌日から10日以内に、労働保険保険関係成立届と労働保険概算保険料申告書、登記簿謄本(法人の場合)などを提出。 |
雇用保険の加入
|
公共職業安定所 | 雇用した従業員が加入要件を満たす場合が対象。従業員を雇用した日の翌日から10日以内に、雇用保険適用事業所設置届や雇用保険被保険者資格取得届、労働保険保険関係設立届(控)、労働保険概算保険料申告書(控)、登記簿謄本(法人の場合)、労働者名簿などを提出。 |
社会保険の加入
|
年金事務所 | 個人事業で常時5名以上の従業員を雇用した時や、無報酬の役員のみのケースを除き法人を設立した時など、強制加入事務所となってから5日以内に手続きが必要。健康保険・厚生年金保険新規適用届や健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(移動)届、登記簿謄本(法人の場合)などを提出。従業員の半数以上の同意により、任意加入もできる。 |
カフェ開業には立地や規模にもよりますが、600万円から1000万円を超える費用が必要とされています。
主な費用 | 費用 | 概要 |
物件取得費(賃貸の場合) | 120万円~300万円 | 前家賃や保証金、礼金、仲介手数料など。 |
内装工事費 | 100万円~800万円 | 設計費や解体費、電気工事費、ガス工事費、建具工事費、内装仕上げ工事費など。 |
厨房設備費 | 120万円~300万円 | シンクやガスコンロ、製氷機、冷蔵庫、冷凍庫、オーブン、食洗機、エスプレッソマシンなど。 |
備品費 | 50万円~200万円 | テーブルや椅子、レジ、食器など。 |
宣伝費 | 20万円~50万円 | 看板やWebサイト制作、グルメサイトの掲載費、チラシなど。 |
運転資金 | 6ヶ月分程度 | 家賃や水道光熱費、人件費、仕入れ代金など。 |
カフェ開業の際には、国や自治体の補助金や助成金を利用できる可能性があります。ただし、年度ごとに締切が設けられている点に注意が必要です。
「IT導入補助金」は中小企業や小規模事業者のITツールの導入による業務効率化を支援するための補助金です。カフェの開業にあたっては、会計ソフトやPOSレジの導入が対象になることが考えられます。IT導入補助金を利用するには、ITベンダーやサービス事業者のうちIT導入補助金事務局に登録のあるIT支援事業者とパートナーシップを組んで申請を行う必要があります。
まず、IT支援事業者からのITツールの提案をもとに交付申請を行います。次にIT支援事業者と購入契約を結んでITツールが納入された後、事業実績報告を行います。そして補助金の交付手続きを行うという流れになります。
このほかには、自治体によっては補助金や助成金が活用できることがあります。たとえば、決められたエリアへの出店に対する「出店促進補助金」や「商店街空き店舗活用事業補助金」「創業等支援家賃補助事業補助金」、新規事業のための新築や改築、増築、設備の導入に対する「新規創業助成金」といった制度が設けています。
カフェ開業に必要なものとして、厨房機器や備品などをまとめました。
【カフェ開業に必要なものリスト】
カフェ開業に必要なものリスト | |
□ | 冷凍庫・冷蔵庫 |
□ | 製氷機 |
□ | 調理台 |
□ | シンク |
□ | 食器棚 |
□ | コンロ |
□ | オーブン、電子レンジ |
□ | 炊飯器 |
□ | コーヒーメーカー、エスプレッソマシン、ジューサー |
□ | 調理器具(まな板、包丁、鍋、フライパン、ボウルなど) |
□ | 食器(カップ、グラス、皿、カトラリーなど) |
□ | 掃除用具 |
□ | ゴミ箱 |
□ | コースター |
□ | ペーパーナプキン |
□ | ペーパータオル、ティッシュ |
□ | 洗剤・スポンジ |
□ | レジ、レジ用品(ロールペーパーなど) |
□ | クレジットカードカードリーダー |
□ | ハンディー・ターミナル、オーダー用紙 |
□ | コイントレー |
□ | 電卓 |
□ | 電話 |
□ | オーディオ設備 |
□ | テーブル、椅子 |
□ | 傘立て |
□ | アート、インテリアグリーン |
カフェの開業費用を抑えるには、大きな割合を占める物件取得費や内装工事費、厨房設備費を安く済ませることがポイントです。
テナントを借りると、高額な物件取得費や内装工事費、厨房設備費がかかります。そこで、自宅を改修してカフェを開けば、物件取得費がかからなくなります。また、キッチンカーによる移動式カフェは、キッチンカーの購入費、あるいはレンタル費と駐車場代や土地使用料などがかかりますが、物件取得費や内装工事費のほか、月々の家賃などがかかりません。
あるいはテナントを借りる場合も、居抜き物件を選ぶと内装工事費や厨房設備費を抑えられます。厨房機器は中古品やアウトレット品を購入して、開業費用を抑えるといった方法もあります。内装工事費はDIYを取り入れて費用を抑える方法があり、コンセプトやデザインによっては向いています。
カフェ開業で失敗しないためのポイントとして、次の点が挙げられます。
コンセプトがしっかりしていないと、どのような人をターゲットにどんな商品を提供したいのか不明瞭になってしまいやすいです。また、事業計画を立てて、採算がとれるか検討することも大切です。
理想のカフェを実現しようとすると、内装などにこだわるあまり、初期費用が大きくなってしまいがちです。しかし、キッチンカーや小規模な店舗からスタートして、初期費用を抑えます。
コンセプトが優れたカフェであっても、自然に集客ができるとは限りません。SNSの活用やグルメサイトへの掲載、ビラ配りなどにより、認知度の向上を図ることが大切です。
コンセプトが固まっていないと、他のカフェとの差別化が難しく、集客が上手くいかない要因となります。コンセプトをもとに、事業計画を立てて収益が見込めるか検討を重ねることが、失敗を避けるために重要です。ただし、コンセプトがよいものであっても、集客のための施策を展開しなければ、認知が広がるまでに長い期間を要してしまうことが考えられます。また、未経験でカフェを開業すると、通常、軌道に乗るまでには時間がかかるため、初期費用を抑えることがリスク軽減につながります。
カフェを開業して成功するには、準備段階でコンセプトの立案や事業計画の作成に力を入れることがポイントの一つです。また、資金計画を立てて、軌道にのるまでの運転資金を充分に用意しておきます。カフェの開業で必要なものは多くありますので、予算内で揃えられるように、費用を抑えることも考えながら準備を進めていくことも大切です。